Corvette C3 Jiotto Caspita Jota Koenig Ferrari Stratos Tipo 33/2 Vector
獰猛な進化型フェラーリ・ロードカー
ケーニッヒ・スペシャルズは、ヴィリー・ケーニッヒが1977年に創業し、息子のヴァルター・ケーニッヒが継承したドイツ・ミュンヘンの自動車チューニング・メーカーです。改造用チューニング・パーツやボディ・キットだけでなく、自社ブランド名を冠したコンプリート・カーも手がけています。
60年代、ヴィリーは出版業を営みながらフェラーリ250GTベルリネッタSWB等を駆るプライベート・レーサーでした。74年に愛車365GT4BBをチューニングして各地のイベントで披露すると好評を博し、エンスージアスト達の依頼に応える形でチューニング・ビジネスを本業化したのです。
その知名度を高めた1台がケーニッヒ512BBiです。パワーユニットをオーストリアのフランツ・アルベルト(アルブレックス社)がツイン・ターボ化し、エクステリアをヴィットーリオ・シュトロゼック(シュトロゼック・デザインの創始者)が水平サイド・スリットを施すなど過激にモディファイしました。
ケーニッヒ512BBiの誕生で、フェラーリのようなスーパーカーを決してレース用にではなく、ロードカーとしてさらに進化(エボリューション)させるというヴィリーのチューニング理念が具現化されました。1/43モデルカーではAMRを筆頭に複数メーカーで作品化されています(写真割愛)。
180度V12エンジンをミッド搭載する旗艦フェラーリの座は、512BBiから84年に発表されたテスタロッサへと移譲されます。ラジエーターがフロントからミッド・エンジン両脇へと配置換えされたことで、テスタロッサにはエアを導く長いスリットがボディの両側面に設けられました。
サイド・スリットはケーニッヒ512BBiが先行していたため、ヴィリーは「本家がうちの真似をしたよ」と語ったそうです。真偽はともかく、ケーニッヒ・スタイリングが一つのデザイン・トレンドだったのは事実でしょう。ここでは少し珍しいバージョンを選び、ケーニッヒ・テスタロッサの魅力を紹介します。
写真の85年式モデルは、テスタロッサ外観上の最大の特徴であるサイド・スリットを残したまま、前後フェンダーを大きく張り出し、ワイド・ボディ化しています。
そこに512BBiターボ譲りのチンスポイラー、楔形のドア・ミラー、大型リアウィングなどを装着しています。本モデルの実車情報は乏しく、モデルカーでも極めて珍しい作品です。
写真の86年式モデルになると、テスタロッサらしさを演出していたサイド・スリットを大胆に全撤去しています。洗練さが抑えられた分、荒々しい野性味が増大しました。
この形状に固定式ヘッドライトと大型リアウィングを装着したバージョンはケーニッヒ・テスタロッサ・ターボとして有名で、1/43モデルカーでも複数の作品が存在しています。
ケーニッヒ・テスタロッサ・ターボは、1000psへのパワーアップと共に、リア回りをF40風の固定式大型スポイラーなどに変更したケーニッヒ・コンペティションへと進化します。
最終進化型エヴォリューション(ケーニッヒ・コンペティションⅡ)では1200psを発揮し、元のテスタロッサと似て非なるアピアランスから、歴代ケーニッヒの代表作となっています。
ケーニッヒは12気筒の旗艦モデルより軽い、V8モデルのチューニング車も製作しています。308と328は、人気のケーニッヒ版BB(365や512)と同系統のボディワークですが、モデルカー化された作品数は非常に限られています。
事情は348をチューニングしたF48でも同じで、テスタロッサ世代であることから人気のケーニッヒ・コンペティション風にリスタイリングされましたが、1/43ではBBRとプロバンス・ムラージュだけが作品化しています(2016年現在)。
F48は、348の特徴でもあるボディ側面下半分のスリットを廃し、ツインターボ用インタークーラーへの吸気口を露出させ、ブレーキ冷却用の吸気口なども巧みなデザインワークで配置し、機能と造形の一体感を生み出しています。
大型リア・ウィングとファストバック式リア・ウィンドウというデザイン・フォーマットは旗艦コンペティションと同じですが、テールランプを348の角形から丸形2灯式に改めており、その名のごとくF40を意識した造形であることが分かります。
93年エヴォⅡは、1/43だとBBRのみが作品化しています。私自身、実車情報は把握できていません。ケーニッヒはコンプリートカーだけでなく、チューニング用パーツを販売していますので、細部のマイナーチェンジ版だと憶測されます。
NA3.4リッターV8の348TS(295ps)をツインターボ化したF48は、2.9リッターV8ツインターボのF40(484ps)を凌ぐ600psを発揮します。348系をベースにF40の性能を超える車に、F48と命名するセンスは秀逸です。
本家フェラーリは、348系の後継車種F355でサイド・スリットを排したことで、ザガート348やケーニッヒF48のデザイン・トレンドを追う形となります。ケーニッヒはF355もツインターボ化し、600psを発揮するF55を生み出します。
F55としての外観上の特徴は、フロント・スカート、ルーフ・スポイラー、アルミ製ステーで支えたリア・ウィングなどです。写真のモデルカーは、ドイツ人プロモデラーがBBR製F355キットをF55に仕立てた、ワンオフの改造品です。
70年代、ピニンファリーナのデザインワークは爬虫類のようで苦手でした。フェラーリを好きになり始めたのは直線基調のテスタロッサから、そして虜になったのは、皮肉なことにテスタロッサらしさを排除したケーニッヒ・コンペティションからです。その存在は、創設間もないBBR社の1枚物製品リーフレット、1/43「BBR20」の写真で知りました。当時は実車情報が少なく、モデルカーも入手困難だったため、そこから私のケーニッヒ・モデル探求の旅が始まったのです。
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