第6章 作品紹介 Artworks

5章25節の30ページで、世界モデルカー博物館の展示作品を1台ずつ紹介・解説してきました。全て魅力的な作品群ですが、それらは展示3700台のほんの一部分、氷山の一角です。

 

そこで、第6章では未来への時間軸を加え5節に展開し、異なる角度から追加作品群の魅力を紐解いていきます。

 




Artwork   Ferrari LaFerrari 2014

作品紹介 フェラーリ・ラフェラーリ 2014

1/43 Ferrari LaFerrari 2014 フェラーリ・ラフェラーリ 2014年

Description
LaFerrari, the successor of Ferrari Enzo, was unveiled at the 2013 Geneva Auto Show as the first V12 mid-engined hybrid supersports from Ferrari to provide 963ps. It is quite exceptional that the bodywork was done by Ferrari design team without any input from Pininfarina. Normally LaFerrari have carbon black roof in any body colours but this 1/43 model car is in all red body specially produced by BBR Italy limited to 50 examples worldwide.

 

作品解説
ラフェラーリは、フェラーリ・エンツォの後継車として2013年に発表されたフェラーリ初のハイブリッド・スーパースポーツです。V12エンジンとモーターで計963psを発揮します。ボディ・デザインはピニンファリーナではなく、フェラーリ内部で行ったためか、優美さより実用性が重んじられた印象を受けます。通常の1/43モデルは車体色にかかわらずカーボン・ブラック・ルーフですが、このモデルは50台限定のオールレッド(イタリア・BBR)版です。他の車種でも屋根の黒いツートン・カラーがありますが、私は可能な限り赤一色のモデルも押さえています。





〔学院長の補足メモ〕

エンツォ・フェラーリが発表された時、皆さんはどう思われましたか? 私は2002年4月に東京現代美術館(江東区三好)で開催された『ARTEDINAMICA 疾走するアート:フェラーリ&マセラティ』展に行き、F50の次期スペチアーレとして初公開された「FX」(実寸模型)を見てきました。F50とは全く異なるフォルムで、どんな実車に仕上がるのかワクワクした記憶があります。そのエンツォが日本人デザイナー・ケンオクヤマ(奥山清行)氏の手になる作品だったとは、当時は知る由もありません。

 

エンツォのモデルカーが一通り発売された頃、1/43高額レジン製の “エンツォGT” という実車無きモデルカーが市場を賑わせました。マニアの方ならご存知でしょう。エンツォのレース仕様という架空の作品で、デザインは2種類ありました。「カッコイイやん!」とコレクター心をくすぐる風体でしたが、少しすると実車「FXX」が登場します。そこで強く認識した事柄があります。エンツォGTは架空の車輛だけあって、ベースとなるエンツォに対し “既成概念の枠を出ない” エアロパーツを後付けしただけのデザインでした。しかしFXXは、ヘッドライトやリア・スポイラーなどの形状が、部外者の創作を超えた “新発想の造形” にデザインされていたのです。エンツォというベース車をゼロから創り出した張本人だからこそ為せる業です。ことデザインに関しては、受取る側の我々が “フォロワー”(追従者)でしかないのに対し、当事者として創造するデザイナーは “リーダー”(先導者)です。この立ち位置の違いは絶対的で、両者には雲泥の差があります。フェラーリTXGなど架空の造形で遊んでいた自分が恥ずかしくなりました(TXGは今でも好きですけど)。

 

こういう衝撃は、エンツォの後継であるラフェラーリが登場した時も同じです。上述の作品解説で述べた通り、フェラーリ御用達のピニンファリーナではなく、社内のデザイン・チームによってラフェラーリは生み出されました。デザインの良し悪しや好き嫌いはともかく、全体のフォルムは先代エンツォの既定路線には全く乗らず、完全に新規デザインが創り上げられています。つまり、プロのデザイナーは “無” から “有” を生み出していると言っても過言ではありません。然るべき才能と科学的な裏付け(空力解析やエンジニアリング)が伴ってこそ、私達フォロワーを感動させられる素晴らしいデザインが誕生するのです。

愛車ビジネスの創出 アヴァンサイト

とは言うものの、先月私は『「愛車」ビジネスの創出』という提言文書を作成しました。第46回東京モーターショー2019で描かれた自動車の未来に納得できず、①愛車、②エモーションvsファンクション、③脱・大量生産・大量消費・大量廃棄、④デザインの民主化、等々のキーワードから、“自分がデザインした1台の「愛車」に死ぬまで乗り続ける” というビジネス・コンセプトに辿り着いたのです。

 

たとえ素人にデザインが難しくても、数年おきに次々と生み出されては消えていく他人が作った “使い捨てデザイン” には納得がいきません。年齢的に免許返納カウントダウンが始まりました。残り少ない自動車人生を考えると、自分が納得できるデザインの「愛車」に一生乗り続けたいと願うのは理の当然ではないでしょうか。当提言にご関心を抱かれた方がいらっしゃいましたら、私までお気軽にご連絡ください。

2020年3月某日