1/43キット組立方法⑤ 塗装編〔本塗装〕



本塗装

この塗装でようやくボディ・カラーになるわけですが、要領としては下塗りと同様の方法で塗装します。ただ、隠ぺい力の低い明るい色の場合はムラにならないように気を付けます。

 

また、夜間に塗装作業を行う場合も多いと思いますが、このときの照明にはなるべく昼光色の蛍光灯を使用しましょう。温暖色の蛍光灯やダウンライトなどの白熱球では正しい色が判りにくく、思った色に塗装できなくなります。

 

塗装後は充分に乾燥させ、乾燥後に下塗りと同様塗装面をチェックして、必要であれば修正を行っておきます。

1/43キット組立方法⑤ 塗装編〔本塗装〕

 

上塗り塗装を上手くムラ無く行うために、塗装が乗りにくい部分を予め塗装しておく方法があります。

 

要らなくなった小ビンなどに缶スプレーの塗料を取り出し、塗装が乗りにくいスジ彫りの中や凹んだ部分などを筆塗りで塗っておきます。

 

この時、筆返しをすると下塗りの白が溶けてきますので、手早くサッと塗るようにします。塗装にエアブラシを使用する場合はこのような処置は必要ありません。

1/43キット組立方法⑤ 塗装編〔本塗装〕

 

本塗装が完了したところ。

 

塗り方は下塗りと同じように薄く2~3回塗り重ねた後、最後にツヤが出る状態にします。

 

上手くエッジの内部にも塗装が出来たようです。

デカール貼り

モデルカー製作の山場の一つ、デカール貼りにかかります。

品質確認

1/43キットと言いましても、デカールは基本的にプラキットと同じです。ただ、デカールのメーカーによって非常に品質のバラつきが大きく、これを充分に知っておかないと失敗してしまうことがあります。

 

最近では国産プラキットにも採用されているカルトグラフなどは良質デカールの代表的なメーカーで、1/43キットでもタメオ始め幾つかのメーカーで採用されています。反面テナリヴやスターターの古いキットのデカールは経年劣化が激しく、水に浸けるとバラバラになってしまうものがかなりあります。また、SRCやSMTSのデカールは間違いなく黄ばんでしまいます。

 

新発売のキットをすぐに作る場合は特に気にしなくていいのですが、絶版になった古いものを作る場合はここら辺も留意しておく必要があります。中にはメーカー不明の素性のわからないデカールが入っている場合もありますので、このような場合はまず不必要なデカール(使わないゼッケンやロゴ)をプラ板などに試し貼りし、状態をよく確認してから使用しましょう。

貼付け要領

では、デカールを貼っていきましょう。要領はプラキットと同じです。デカール・シートからカッター・ナイフやデザイン・ナイフ、ハサミなどで必要なデカールのみ切り抜いて貼ります。

 

インストや資料写真を良く見て、位置や向きを間違えないように、曲面にはデカール軟化剤を使いながら慎重に馴染ませましょう。注意点としては、綿棒を使いながらしっかりと空気を抜いて密着させる、デカールが乾燥するまではデカールを擦らない、特にデカール軟化剤で柔らかくなったデカールを擦ってしまうと一発でアウトですので要注意です。

 

ボディー・ストライプやカラーリングなどの大判デカールは、2~3枚に切り分けて貼ると良いでしょう。あまり大きなデカールを一気に貼ろうとすると失敗の元です。デカールを貼り終えたら充分に乾燥させます。乾燥時間はデカールによって変化しますが、できれば24時間以上は乾燥させるのが好ましいようです。

 

デカールが乾燥したら一旦ボディを水洗いします。これはこの次のクリアー掛けの準備工程でもあり、デカール貼りの時に付着した余分なノリを除去する為です。この時の注意点として、水洗い中に密着の悪かったデカールが剥がれ流れてしまうことがあるので、洗面器などの中で洗うようにしたほうが良いでしょう。こうすれば万が一剥がれてしまっても、デカール専用のノリ(マークセッターなど)を使用して貼り直すことが出来ます。

 

また、デカールの密着具合が悪く、気泡が抜け切っていない箇所はボディを水に漬けるとよく判りますので、この時に再度チェックしておくと良いでしょう。

 

水洗いが済みましたら再度乾燥させます。

1/43キット組立方法⑤ 塗装編〔本塗装〕

 

デカール軟化剤です。

 

各模型メーカーなどから何種類か発売されていますが、種類によって効き目が異なりますので、使用する前には不要なデカールでテストしましょう。

 

写真左のクレオス製の軟化剤は入手しやすく、効き目もマイルドで、デカールを溶かしてしまう失敗のリスクも少ないためお勧めです。

1/43キット組立方法⑤ 塗装編〔本塗装〕

 

デザイン・ナイフでデカールを切り出します。

 

余分なフィルムはカットして、なるべく文字やロゴに近いところで切り出しましょう。

 

もちろんデザインナイフの刃は切れ味の良いものを使用します。

1/43キット組立方法⑤ 塗装編〔本塗装〕

 

デカールを水につけ、台紙からスルリと剥がれるようになったらボディに乗せ、綿棒でそっと押さえて水分と気泡を取り除きます。

 

位置の微調整を行ったらデカール軟化剤を塗り、また綿棒で押さえてしっかりと密着させます。

クリアー塗装

さて、ボディの方はいよいよクリアー塗装に入ります。

塗装要領

使用するのはラッカー・クリアー塗料ですので、前述の通りシンナー分を多く含んだ塗料です。多くの失敗はこのシンナーがデカールを侵してしまうことによって発生します。

 

失敗を避ける最大のポイントは、とにかく焦らず、少しずつ塗り重ねること、塗るごとに乾燥を充分させることでしょう。焦って厚く塗りすぎたり、乾燥が不十分なうちに塗り重ねたりすると、間違いなく失敗します。

 

ここで失敗すると、今までの工程が全てパーになってしまうので、モチベーションが一気に下がってしまいます。仕上がりに多少の不満はあっても、まずは完成させることが次へのチャレンジ意欲を掻き立てる原動力となります。とにかく慎重に行いましょう。

 

ラッカー・クリアーも、模型用のものが各メーカーから発売されていますし、実車用のものもあります。缶スプレーであれば特に大きな違いは無いようです。実車用ならソフト99のクリアーが透明度も高く、ツヤも出るようです。

吹き付け方法

注意点は今までの塗装と基本的には変わりません。ただ、今までの塗装より更に距離を多めに取り、1~3回目くらいまではホコリがかぶった程度に塗り重ねます。

 

塗装間の乾燥時間は、20℃以上の気温ならできれば3時間確保しましょう。1回塗るごとにデカールの状況を確認しながら塗り重ねます。

 

概ね全体がコートできたら、最後にツヤ出しの為に少し多めに吹きます。表面が光り、テロっとしたら止めます。これができたらホコリの付かない場所で完全乾燥させます。

 

指で触れても大丈夫だからといって、完全乾燥している訳ではありません。完全に乾燥させるためには、1週間ほど放置しておくのがベストでしょう。

1/43キット組立方法⑤ 塗装編〔本塗装〕

 

クリアーを塗装します。

 

写真は薄く3回ほど塗り重ねたところ。

 

まだ表面はザラザラしています。

1/43キット組立方法⑤ 塗装編〔本塗装〕

 

最後に表面がテロッとツヤが出る状態にします。

 

この時も吹き付けすぎには十分に注意します。

小物パーツの塗装と組立

クリアーの乾燥を待っている間に、その他の小物パーツを塗装します。手順としてはボディなどと同じように、プラサフを塗装した後に塗装しますが、ブラックで塗装する場合は下塗り不要ですので、そのままブラックを吹き付けます。

1/43キット組立方法⑤ 塗装編〔本塗装〕

 

小物パーツを塗装します。

 

塗装前に各パーツはペーパーで表面を仕上げておきます。特にエッチング・パーツは表面の酸化皮膜を落としておかないと塗装が上手くのりません。

 

その後目玉クリップ、カットした割り箸、両面テープなどを活用し、パーツを固定して塗装します。

1/43キット組立方法⑤ 塗装編〔本塗装〕

 

タイヤ&ホイールも組立てましょう。

 

エッチング・パーツの接着にはクリア・ボンドか、ウィンドゥ用接着剤を使うと良いでしょう。

1/43キット組立方法⑤ 塗装編〔本塗装〕

 

ホイールが完成しました。

 

当時流行していたBBS製のメッシュ・ホイールが精密に再現されています。センターのロック・ナットはアルミのヒキモノ・パーツで用意されています。

1/43キット組立方法⑤ 塗装編〔本塗装〕

 

タイヤのトレッド面は、バリやパーティングラインがあります。ハコ車の場合は完成後にはあまり見えなくなりますが、奇麗にしておくとより完成度が高くなります。

 

仕上げには#1000くらいのペーパーを使い、水をつけながらゆっくりと削ります。この時早くゴシゴシ削ろうとすると熱によってタイヤのゴムがささくれてきてしまいます。

 

写真右が仕上げたもの。違いがわかりますか?

研ぎ出し

多くのプロの作品を見てみますと、沢山デカールの貼ってあるものであっても塗装表面はまるで鏡のように滑らかに、ツヤはピカピカというよりもキラキラと輝く状態に仕上られています。

 

これはただ上手く塗装しただけではなく、研ぎ出しと呼ばれる工程を経ている為です。研ぎ出しとは読んで字の如く、塗装表面の段差や凸凹をサンドペーパーで綺麗にならし、コンパウンドで磨きこんである為です。

 

プラキット製作で既にやっておられる方もいらっしゃると思いますが、今回はこれに挑戦してみましょう。

ボディの乾燥

 

研ぎ出しを始める大前提は、まずクリアーが完全乾燥していることです。乾燥が不十分だと思うようなツヤが出ないばかりか、コンパウンドがけの際の熱で塗膜が軟化し、指で触った指紋が付いてしまったりします。これを防ぐ為にもボディは完全に乾燥させましょう。

塗膜の厚さ

ボディ全体を覆っている塗装の厚さは均一ではありません。厚い順に 水平面>垂直面>エッジ となります。つまり、エッジや垂直面は塗膜が薄いので磨きすぎには十分注意が必要なのです。場合によっては予めエッジ部分のみマスキング・テープを貼っておき、削らないように保護しておく方法もあります。

ペーパーがけ

まずは#1500のペーパーで全体を磨きます。表面の凸凹をならすことが目的ですので、特にデカールの段差をよく確認し、段差が無くなるようにします。研ぎ出し全体を通しての注意点は、磨きすぎによる下地の露出です。この失敗をなるべく避けるには塗装の厚さに留意します。

 

#1500で全体をならすことができたら、次に#2000のペーパーで磨きます。これはコンパウンドがけの準備工程となりますので、#1500のペーパー目をきちんと消しておきます。特に凹んだ部分などは磨きにくい為、ついつい磨き残してしまいますが、小さく切ったペーパーを折り曲げたり、割り箸の先端にペーパーを貼付けたものを使用して根気よく磨きます。

 

ペーパーがけの際には、そのままペーパーをかける「空研ぎ」と、水を含ませる「水研ぎ」があります。水を含ませることによって同じ番手のペーパーでも削れる量が少なくなりますので、状況に応じて使い分けると良いでしょう。

1/43キット組立方法⑤ 塗装編〔本塗装〕

 

全体に#2000のペーパーをかけ終わったところ。

 

今回はほとんどデカールがありませんが、エッジ付近に溜まったクリアーや全体のうねりを無くしておきます。

コンパウンドがけ

コンパウンドは細かさ別に23種類あれば十分です。別々に購入するよりはセットになっているものを購入すると良いでしょう。専門ショップで購入できます。

 

併せて柔らかい布地を用意します。コンパウンドのセットを購入すると同梱されているものもありますのでそれを使用すれば良いですが、結構布地は使いますので出来れば別に用意しておくと良いでしょう。一番良いのはネル地と呼ばれるもので、ぬいぐるみの材料等として手芸品店などで売られています。

 

その他に細かい部分を磨く時には綿棒が便利ですので、これも用意しましょう。綿棒はデカール貼り等、色々な用途に使いますので、200本入りのものを一つ買っておくと長持ちします。ドラッグストアなどで購入できるごく普通のもので十分です。先がギザギザしたものは使いにくいので止めておきましょう。

 

さて、準備ができれば作業にかかります。まずは少し荒めのものでペーパー目を消します。この時に下地の露出を気にしすぎて磨く力が弱いとなかなかツヤが出ませんので、しっかり磨き込みましょう。

 

この力加減を文章で伝えるのは難しいので、とにかく数をこなして経験を積むことが上達の早道です。ただし、あまり速いスピードでゴシゴシやると摩擦による熱で塗装がただれてくる時がありますので、ゆっくり、しっかり、根気よく磨きます。

 

そして、全体にある程度ツヤが出て、ペーパー目が消えたらここで一旦水洗いして洗浄します。これはこの次に細かいコンパウンドを使用する時に荒いコンパウンドが残っていると具合が悪い為です。スジ彫りなどの細かい部分も含め、綺麗にしておきましょう。

 

洗浄が終わりましたら、順に細かいコンパウンドを使用して磨き込みます。新しいネル地を使用してピカッと光るまで根気よく磨きます。この時も下地が露出しないようエッジ部分などは十分気をつけて作業を進めます。凹んだ部分や細かい部分は綿棒を使用して磨きます。完了しましたら再度洗浄し、残ったコンパウンドを綺麗に落とします。

1/43キット組立方法⑤ 塗装編〔本塗装〕

 

研ぎ出しがほぼ完了したところ。全体がツルツルになりました。滑って落とさないように注意しましょう。

 

もし磨きが不十分な箇所があれば、コンパウンドがけをやり直します。

ディティールの塗装

次に細かいディティール部を塗り分けます。ボディ内側やホイール・ハウスの内側はつや消しブラックで、その他の部分はインストや実車の写真などを見ながら塗り分けます。

 

エアブラシがあればマスキングして吹き付け塗装すると奇麗に仕上がりますが、筆塗りでも十分満足できる仕上げは可能です。

1/43キット組立方法⑤ 塗装編〔本塗装〕

 

ボディ内側やヘッド・ランプ部分などのディティールを塗り分けたところ。

 

全体が引き締まって実車らしくなってきました。