創造広場アクトランド ACTLAND 世界モデルカー博物館 World Model Car Museum

第7章 / 第2節 展示概要 Contents

世界モデルカー博物館は、『モデルカー学』の実践成果を、世界中のどなたにでも体感していただける施設です。第1章から第7章まで学習され、モデルカーの愉しみ方とその醍醐味を修得された方なら、当館を存分にご堪能できるでしょう。

 

本節では、館内で敢えて情報公開(解説)していない展示構成と、お勧めの鑑賞手順などを紹介します。ご訪問の際は、事前に内容を把握されておくことで、展示状況を一々腑に落としながら、一層刺激的な作品鑑賞が可能となるはずです。


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博物館を愉しむ秘訣


入口で立ち止まる

世界モデルカー博物館の扉を開くと、ほとんどの方が感嘆の声を発されます。眼前に広がる、壁一面に輝くモデルカー達の存在感が圧倒的だからです。そのため、展示室に足を踏み入れると、ついつい室内奥深くに吸い込まれていきます。

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そうしたい気持ちを抑え、一旦入口で立ち止まってください。右手の壁に、展示中の実車ブランドを国別にエンブレムで紹介しています。有名な大企業から中小メーカー、既に消滅したブランド、カロッツェリアやチューナーまで200種を網羅しています。

 

さらに、入口正面に特別なハイケースを用意し、厳選した作品群で、モデルカーの全体像をコンパクトに理解できる展示を行っています。マニアから一般の方々まで、モデルカーの基礎知識と魅力を一目で把握していただける優れものです。

 

実車ブランドのエンブレム・ポスターは、他で見られないほど充実しており、モデルカー業界におけるリリース作品の幅の広さが読み取れます。また、ハイケース展示はエッセンスだけですが、モデルカー趣味の奥深さを感じ取れるはずです。

エンブレムの意味を知る

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空間を四方に取り囲む壁据え付けの棚には、実車ブランドのエンブレム・ポスターに準拠し、国別かつ実車ブランド毎(アルファベット順)に作品を展示しています。そのため、ブガッティなどはフランス時代とイタリア時代で展示位置は異なっています。

 

多くの方が入室してすぐ、「うわー、真っ赤っか」という言葉を発されますが、これはアルファロメオやフェラーリなど、レースを起源に持つイタリアン・ブランド車が数多く、車体色をイタリアのナショナル・カラーである赤に統一しているためです。

 

主な国別展示作品(2015年5月時点)は、イギリス車468台、ドイツ車699台、イタリア車1,435台、フランス車290台、アメリカ車252台、日本車451台です。これら6箇国の合計は3,595台で、何と全展示作品数(18箇国)の約97%を占めています。つまり、モデルカー文化の土台を形成する実車は、ほぼ6箇国の工業生産物なのです。

 

当館のエンブレムでは、主要6箇国を伝説の天馬「ペガサス」に由来する左右6段の翼で表現しています。ペガサスは “不死” の象徴であり、モデルカー趣味が “文化” として未来永劫続くようにとの願いを込めたデザインです。

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時計回りに巡る

たった一部屋の展示室ですので、色々と見比べたり、好きな車種を探したりと、車イスの方でも不自由しない動線の幅を確保しています。一方で、展示室の設計に際しては、作品を体系的にご鑑賞いただくための「順路」を設定しています。

 

入口で当館の全体像を把握したら、取り敢えず真横に移動しましょう。特別な作品を展示した1番目のアクリル・ドームです。ここには、旧・AMRや特注品など特別な作品を展示しています。どちらかというと、ある程度キャリアを積まれたマニアの方を惹きつける趣向です。

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次に、入口に面した左側の展示棚へ向かいます。ここが国別展示ツアーの出発地点です。時計回りに進み、イギリス、ドイツ、欧州(オランダ等)、イタリア、フランス、欧州(スペイン等)、北欧、アメリカ、その他(カナダ、韓国等)、日本と続きます。

 

時計回りを指定する理由は、まず国の並びが左からほぼエンブレム・ポスターに準拠しているためです。さらに、ブランド名がアルファベット順になっている上、同一ブランドでも実車の歴史(発売年代)を辿ることができるよう、作品を並べているからです。

作品間の造形の違いを知る

作品が年代順なのは一瞥して分かります。時代によって車のスタイリングが大きく変化しているからです。しかし、パッと見は同じ車にしか見えない作品が出てきます。さて、あなたの洞察力、つまり “違い発見センサー” が試される番です。

 

同じDNAをテスタロッサ、512TR、F512Mと12年間継承しながら3回車種名を変えたモデルチェンジや、ロータス・エスプリのように、28年間単一の車種名ながら、複数のデザイナーが順に手掛けたマイナーチェンジなどが待ち受けます。

 

その上を行くのが、1964年以降続くポルシェ911シリーズで、911という単一車種名では区別できないため、開発コード(930や997等)が実質的な名称です。そこからさらに、GT2やGT3などが派生するから、区別は複雑怪奇化します。

 

最難関の区別問題は、単一車種での仕様違いです。エアロ・パーツなどの違いは初級編で、ホイールなど部品形状や内装の色、製作したモデルカー・メーカーの違いなどは中級編。極めつけ上級編は、外観からは一切判別がつかないハンドル位置の左右違いです。

必ず縦横に攻める

順序立てた展示を試みたものの、1/43モデルで棚6段、それが展示室の壁四方に連続して広がっています。各車種でも台数が異なり、展示空間を無駄なく活用するには、どの車種・作品をどう配置すべきか、結構な工夫が必要でした。

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どの段の棚に置くかは、身長160~170cmの人の目線高を特等席とし、コレクションとしての充実度や、実車種の魅力などを勘案して、上下配置を決めました。一番見辛い最上段の棚には、主に1950年代以前の車種を配しています。

 

同じ高さの棚でも、棚下照明の距離と角度で、最も美しく光が当たる位置が決まっています。一番手前は近くて見やすいけれどやや陰が生じ、2列目は光が強すぎて車体色が少し飛ぶ(例えば赤がオレンジ化)など、微妙な違いがあるのです。

 

単一車種でも数十台の作品群が並んでおり、目線の棚に注目して横に追っていくと、関連する上下の棚を置き去りにしがちです。そこで、横移動しながらも背伸びしたりしゃがんだりと、必ず上下運動も加えて全棚の作品を堪能してください。

心惹かれる1台を決める

3700台もある訳ですから、筋金入りのコレクターでも、一度に全ての展示作品を理解し、記憶するのは困難です。モデルカー初心者の一般の方なら尚更です。そこで、少なくとも1台、「この車好き」と断言できる作品を見つけてください。

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決して、1台に限定しろというのではありません。美人揃いの「乃木坂46」から、初見で “推しメン” を1人だけ決めるのが難しいのと同じです。そういう場合、「フランス車が好き」や「ウェッジシェイプがカッコ良い」など “ハコ推し” から始めましょう。

 

要は、何かしらの「キーワード」をつかむということです。物事は往々にして「初めに心ありき、次に言葉ありき、そして行為ありき」です。哲学的な順序はともかく、あなたの心に「素敵!」と響いた1台(以上)を、何らかの言葉にして記憶してください。

 

世界モデルカー博物館を出た後でも、その言葉を繰り返し口にすることで、その作品(及び実車)への思いは深く心に刻まれていきます。その最初の “一点” が “線” となり、左右上下につながって “面” となり、やがて “体” へと発展します。

車の不思議を心に留めて宿題にする

実車マニアやコレクターの方は、ご自身がお気に入りの車種をご存知です。その場合、当該車種や作品を中心に鑑賞されることが多いようです。それも愉しみ方の一つですが、当館では未知の作品(実車)との出会いも大切にしてください。

 

私自身、モデルカー・コレクションを始めたきっかけは、ロンドン駐在時に英国SMTS社製ランボルギーニ・ミウラとカウンタックに出会ったことです。当時はせいぜいスーパーカー・ブーム時代の実車情報しか持ち合わせていませんでした。

 

デザイナーのガンディーニ繋がりで、次に買ったSMTS社の作品がチゼータ・モロダーでした。先に実車を知っていた訳ではなく、店頭でモデルカーを見て、初めてその車種の存在を知りました。一大コレクションに発展したケーニッヒも、似た経緯を辿っています。

 

特に古い年代の車や、少量生産の車、消滅したブランドの車などは、モデルカーの方が目に留まりやすい環境にあります。そこで、「あれっ、この車は?」と不思議に思った作品を心に留め、次回来館まで実車情報を探求する宿題にしてください。その答え合わせに、また世界モデルカー博物館へお越しください。

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