楔形スタイル Wedge Shape


スーパーカー・デザインの幕開け


世の中にスーパー・スポーツカー(高性能車)は存在していましたが、日常使いの乗用車ではなく、レーシングカーでもなく、性能・外観・価格共に実用性を超越したロードカー、つまり “スーパーカー” の存在を社会に強く印象付けた出来事が、ミッド・エンジン車ならではのウェッジ・シェイプ(楔形)ボディを纏った華麗な自動車達の登場です。

 

その記念すべき第1号車が、1968年のパリ・モーターショーでベルトーネから発表されたカラーボ(緑色)です。シャーシはアルファ・ロメオ・ティーポ33と同じですが、外観は全くの別物に仕上がっています。写真は60台限定の赤色モデルです。

 

カラーボをデザインしたのはマルチェロ・ガンディーニで、彼が考案した前方跳ね上げ式のシザー・ドアなど、多くの意匠が後のランボルギーニ・カウンタックに継承されています。

 

ウェッジ・シェイプの特徴は、扁平な前面ガラスが車体前方と一直線につながり、フロント・ノーズから屋根の前端まで1枚の平面(傾斜45°より鋭角)で構成している点にあります(厳密な定義ではありません)。

 

このデザインはジョルジェット・ジウジアーロも得意とし、彼の手になるマセラティ・ブーメランはウェッジ・シェイプの究極の完成度を誇る1台です。実車はフルレストアを経て、現在でも自走可能なコンディションに維持されているそうです。ちなみにドアは跳ね上げ式ではなく、水平に開きます。

Alfa Romeo Carabo Bertone / アルファ・ロメオ・カラーボ・ベルトーネ 1968年

1/43 Alfa Romeo Carabo Bertone / アルファ・ロメオ・カラーボ・ベルトーネ 1968年

Maserati Boomerang Italdesign / マセラティ・ブーメラン・イタルデザイン 1972年

1/43 Maserati Boomerang Italdesign / マセラティ・ブーメラン・イタルデザイン 1972年

Aston Martin Bulldog / アストン・マーティン・ブルドッグ 1980年

1/43 Aston Martin Bulldog / アストン・マーティン・ブルドッグ 1980年

Lamborghini Diablo VT-R / ランボルギーニ・ディアブロ VT-R

1/43 Lamborghini Diablo VT-R / ランボルギーニ・ディアブロ VT-R

スーパーカーの代名詞となったカウンタックは、1990年にランボルギーニ・フラッグシップの座をディアブロに譲ります。同じくガンディーニがデザインしましたが、親会社クライスラーが注文を付け、無難なフォルムに変更されました。辛うじてガンディーニ・デザインのプレートが装着されたものの、当初のオリジナル・デザインはチゼータ・モロダーの方に引き継がれたと言われています。

 

ディアブロは2001年まで数々のバージョンが生み出されましたが、その中で私が一番気に入っているデザインはが、このVT-Rです。ガンディーニの基本的フォルムを損なわない程度のエアロパーツが、スーパーカーとしての成熟感を漂わせています。世界モデルカー博物館には、マイナー・バージョンも含め、ほとんどのランボルギーニ車が揃っています。