カー・デザイナー・オブ・ザ・センチュリー
1938年にイタリアのピエモンテ州で生を受けた偉大な自動車デザイナーは2人います。ランボルギーニのデザインを多く手掛けたマルチェロ・ガンディーニと、彼の前にベルトーネのチーフ・デザイナーだったジョルジェット・ジウジアーロです。
マルチェロがフリー・デザイナーの道を歩んだのに対し、ジョルジェットは “近代的な大量生産に直結する、一貫したデザインプロセスを生み出せる組織” を目指す会社を創設・運営して、自動車業界全体に大いなる貢献を果たしました。
Name / 氏名 | Giorgetto Giugiaro | ジョルジェット・ジウジアーロ |
Born / 生誕 | 7 August, 1938 / Garessio, Cuneo, Piedmont, Italy |
1938年8月7日 / イタリア、ピエモンテ州、クーネオ、ガレッシオ |
Occupation / 職業 |
Automobile and Industrial Designer, Founder of Design Firm Italdesign |
自動車・工業デザイナー、デザイン会社イタルデザインの創業者 |
Career / 経歴 |
1955: Fiat Centro Stile 1959: Bertone, Chief Designer 1965: Carrozzeria Ghia, Chief Designer 1967: Ital Styling, Co-founder 1968: Italdesign (re-named) 1981: Giugiaro Design, Founder 2010: Chairman of Italdesign (Owned by Volkswagen Group) 2015: Retirement of Italdesign |
1955年: フィアット・チェントロ・スティーレ 1959年: ベルトーネ(チーフ・デザイナー) 1965年: カロッツェリア・ギア(同上) 1967年: イタル・スタイリング(共同創設) 1968年: イタルデザイン(名称変更) 1981年: ジウジアーロ・デザイン(創設) 2010年: イタルデザインの会長に就任(フォルクスワーゲン・グループが買収) 2015年: イタルデザインを引退 |
Awards / 受賞歴 |
Compasso d'Oro Design Prize : 1981, 1991, 1995, 2004 Compasso d'Oro alla Carriera (Lifetime Achievement Award) : 1984 The Car Designer of the Century : 18 December, 1999 in Las Vegas Inductee of Automotive Hall of Fame : 2002 in Dearborn, Michigan |
コンパッソ・ドーロ・デザイン賞: 1981年、1991年、1995年、2004年 コンパッソ・ドーロ・アラ・カルリエーラ賞(特別功労賞/生涯業績賞): 1984年 カー・デザイナー・オブ・ザ・センチュリー: 1999年12月18日、アメリカ、ラスベガス 自動車の殿堂入り: 2002年、アメリカ、ミシガン州、ディアボーン |
Associates / 関係者 | Dante Giacosa, Nuccio Bertone, Franco Scaglione, Aldo Mantovani, Hideyuki Miyagawa, Fabrizio Giugiaro | ダンテ・ジアコーサ、ヌッチオ・ベルトーネ、フランコ・スカリオーネ、アルド・マントヴァーニ、宮川秀之、ファブリティオ・ジウジアーロ |
幼い頃から芸術に親しんでいたジョルジェットは、中学卒業制作のフィアット500のイラストが、設計者ダンテ・ジアコーザの目に留まり、高校中退して17歳でフィアット・スタイリング・センターに就職します。昼は働きながら夜は美術学校で絵を教え、自動車の知識と美の感性を育んでいきます。
上級美術学校に進むためフィアットを退職し、夜間の仕事を探してヌッチオ・ベルトーネに相談したところ、59年にベルトーネとの専属契約を解除したフランコ・スカリオーネの後任としてベルトーネにスカウトされます。そして同年、若干21歳にしてベルトーネのチーフ・デザイナーに就任するのです。
ジョルジェットはベルトーネで20台以上をデザインし、65年にカロッツェリア・ギアへと移籍しますが、67年にデ・トマソに買収されると独立し、ベルトーネ時代からの友人・宮川秀之、設計事務所を経営していたアルド・マントヴァーニと共に、68年にトリノのモンカリエーリでイタルデザインを創設します。
「多くの人々が喜ぶもの、それが美である」との信念から、初代ゴルフやフィアット・パンダなど、洗練されたスタイリングの大衆車を数多く生み出し、99年12月18日には20世紀で最も影響力のあったカー・デザイナーとして、100年に1人の『カー・デザイナー・オブ・ザ・センチュリー』を受賞しました。
自動車メーカーのフィアットや大手カロッツェリアのベルトーネでの経験を活かし、ジョルジェットはエクステリアだけでなく、エンジニアリングやコスト・コントロールまで包括的に提案し、初代フォルクスワーゲン・ゴルフなどを世に送り出しました。
スーパーカーだと、イソ・グリフォやアルファ・ロメオ・ジュリア、マセラティ・ブーメランやBMWナスカ、ランボルギーニ・カーラなどがあり、『モデルカー学』内の他の章で紹介しています。従って、それらと重複しない4台を取り上げました。
アルファ・ロメオ・カングーロは、ベルトーネ時代にジョルジェットが初めてデザインしたコンセプト・カーです。シャーシはアウトデルタが製作したレースカーのTZ2(Tubular Zagato 2)で、カングーロとはイタリア語でカンガルーを意味します。
美しく躍動感溢れるフォルムですが、生涯初のコンセプトカーということもあり、ジョルジェット自身はスタイリングをエンジニアリングに融合できていないと回顧していました。1/43モデルカーでは、3社から発売されています(2016年現在)。
ジョルジェットは、1971年に偶然出会ったコーリン・チャップマンからロータス・ヨーロッパの後継ミッドシップ車のデザインを託されます。翌72年のトリノ・モーターショー、イタルデザイン・ブースには、マセラティ・ブーメランの隣にウェッジ・シェイプ・コンセプトカー、ロータス・エスプリが展示されていました。
75年に生産が開始されたエスプリは、直4エンジンのターボ化、エクステリアのリファイン、V8ターボ・エンジン化など進化を重ねつつも基本的フォルムはそのまま継承され、2004年までの約30年間生産されました。ただし、純粋なジョルジェット・デザインのボディを纏うエスプリは87年式までです。
ジョルジェットは2002年のジュネーヴ・モーターショーで、新型アルファ・ロメオのデザイン・スタディ・モデルを発表します。シザー・ドアと400psのマセラティ製4リッターV8エンジンを搭載していましたが、2005年の量産市販車は通常の横開きドアと260psの3.2リッターV6エンジンに変更されました。
ブレラ・コンセプトは、イタリア工業デザイン協会(ADI)が3年に1度開催する、国内で最も権威のあるコンパッソ・ドーロ(ゴールデン・コンパス)・デザイン賞を2004年に受賞します。印象的なフロント・マスク・デザインは、兄弟車種の159を始め、他のアルファ・ロメオ車種にも採用されていきました。
6 作品紹介 ≫ 6-1 逸品解説 6-2 デザイナー 6-3 実車ブランド 6-4 未組立キット 6-5 製品化要望