ミラノの軽量ボディ・スペシャリスト
ベルトーネともピニンファリーナとも違う、個性的なスタイリングを数々生み出してきた現役の老舗カロッツェリアの代表格が、ミラノを本拠地とするザガートです。
トリノのカロッツェリアが近代的な自動車メーカーを目指したのに対し、ザガートは少量生産の限定車や顧客の要望に応える特別車(フォリセーリエ)を中心に生産し続けています。
Name / 社名 | ZAGATO - ZED Milano s.r.l. | ザガート - ZEDミラノ |
Location / 所在地 | Terrazzano di Rho, Milan, Italy | イタリア、ミラノ、ロー、テッラッツァノ |
Founder / 創業者 | Ugo Zagato | ウーゴ・ザガート |
Founded / 設立 | 1919 in Milan, Italy | 1919年 / イタリア、ミラノ |
Former Names / (創設から) |
Carrozzeria Ugo Zagato & Co. La Zagato Zagato Indultrial Design s.r.l. Zagato Car s.r.l. SZ Design s.r.l. Zagato Centrostile s.r.l. |
カロッツェリア・ウーゴ・ザガート ラ・ザガート ザガート・インダストリアル・デザイン(分社) ザガート・カー(分社) SZデザイン ザガート・デザインセンター |
Key People / 主要人物 |
Ugo Zagato (1890-1968) Elio Zagato (1921–2009) Gianni Zagato (1929-) Andrea Zagato (1960-) |
ウーゴ・ザガート(1890~1968年) エリオ・ザガート(1921~2009年) ジャンニ・ザガート(1929年~) アンドレア・ザガート(1960年~) |
Designers / 主要デザイナー |
Ercole Spada Nori Harada |
エルコーレ・スパーダ 原田 則彦(ノリ・ハラダ) |
Organisations / 関連団体 |
Coventry Prototype Panels Ltd CPP Milan s.r.l. Envisage Group Ltd |
コベントリー・プロトタイプ・パネルズ(CPP) CPPミラン エンヴィザージ・グループ |
ガヴェッロ生まれのウーゴ・ザガートは、大学でデザインを学び、ヴァレーゼのカロッツェリア・ヴァレシナや、トリノの航空機メーカー・ポミリオで軽量金属加工技術等を習得し、1919年にミラノでカロッツェリア・ウーゴ・ザガートを設立します。
戦前はフィアット509SSやアルファ・ロメオ6C1750SSを、戦後はファン・マヌエル・ファンジオが51年にF1世界王者を獲得したアルファ・ロメオ159のボディなどを製造し、息子のエリオやジャンニも加わり、空力スタイリングを洗練させます。
60年にはエルコーレ・スパーダが入社し、イタリア車だけでなく、アストン・マーティンやジャガーなどイギリス車も手掛けます。エルコーレは69年にザガートを離れますが、後任として原田則彦を発掘して、92~93年だけ古巣に戻ってきます。
21世紀になると、イギリス・コヴェントリーのコーチビルダー、CPP社やエンヴィザージ・グループとの間で資本関係や事業体制に何らかの変化があり、2016年現在における社名は、本体に “ザガート” を冠しないZEDミラノとなっています。
ザガートで最も特徴的な造形は、2列のコブ状に盛り上がった屋根でしょう。レースカーに軽量ボディを架装していたザガートらしく、空力的に屋根を低くしたフィアット・アバルト750GTで、ヘルメット装着時のヘッドルーム確保のために誕生しました(1956年)。翌年レースで大活躍したことから、ダブルバブルの愛称が付けられ、ザガートの個性として定着しました。
ダブルバブル・ルーフとは別に、ザガートのスタイリングには、シンプルな形状に彫刻するジョルジェット、大胆に力強さを演出するマルチェロ、流麗なラインを描くピニンファリーナ、優しい曲面で包み込むピーターらとは全く異なる、意図的に均整を崩したような強烈な不均衡の美が存在します。第6項のエルコーレ・スパーダの作品と併せ、魅力をご堪能ください。
1991年にザガートは、74年の330コンヴェルティービレ(コンバーチブル)以来、17年振りとなるフェラーリのリスタイリング・モデルを発表します。ベース車の348tbのエンジニアリングには手を入れず、基本フォルムを継承しつつ新造形した、オール・ハンド・メイドのアルミ・ボディに換装されました。
348tbと印象が大きく異なる理由は、テスタロッサのV8版として直線基調に仕立てられていた各部の意匠が、連続性を持たず独立した曲線基調に変更されているからです。NACAダクト風にしてフィンを全撤去したサイド・スクープは後のF355に、透明のエンジン・カバーは後の360モデナに採用されました。
ザガートはランボルギーニに関しても、1966年にエルコーレがデザインしたGTZ3500GTZ以来、30年ぶりにコンセプトカーを製作し、96年のジュネーヴ・モーターショーで発表します。デザイナーはエルコーレの後任、原田則彦です。
ディアブロVTのシャーシに、新造形のカーボン・ファイバー製ボディを架装し、軽量化を図っています。SE30(93~95年)の洗練されたスタイリングとは真逆で、その名の如く猛禽類を想起させます。写真はショップ特注レッドのモデルカーです。
ザガート(当時はSZデザイン)は、ランボルギーニからディアブロ後継車のデザイン・スタディを依頼されます。開発コードL147として、1998年に原田則彦がカント(歌曲や旋律の意味)・プロトタイプを製作しますが、事態は急変します。
同年、ランボルギーニがフォルクスワーゲン傘下のアウディ・グループに買収され、会長のフェルディナント・ピエヒによってカント・プロジェクトが完全に白紙撤回されたのです。そうして2001年、社内デザインのムルシエラゴが発表されます。
ザガートは、同郷ミラノのアルファ・ロメオ創業100周年、及び提携90周年を記念し、2010年に原田則彦によるTZ3コルサを発表します。エルコーレがデザインし、レースで大活躍したTZ1(63年)とTZ2(65年)のレトロ・コンセプトです。
その名(コルサ=競争)が示す通りの純レーシング・カーで、ドイツ人の愛好家がFIA‐GT選手権出場のためにオーダーしたワン・オフ・モデルです。翌11年に、そのロードカーであるTZ3ストラダーレを発表し、わずか数台が生産されました。
6 作品紹介 ≫ 6-1 逸品解説 6-2 デザイナー 6-3 実車ブランド 6-4 未組立キット 6-5 製品化要望